(1)本年度は最後の研究年度で、研究の成果の一部を、歴史学研究会大会近世部会(5月28日学習院大学)において、「近世後期における大名家の由緒-長州藩を事例として」として発表した。報告の簡単な概要は、地域を中心としてきた由緒研究に対し、大名家の由緒を改めて位置づけたものである。そのなかに、幕末期にいかに戦没者が祭祀や儀礼・由緒の展開のなかで浮上してくるかを盛り込んでみた。その成果は「近世後期における大名家の由緒-長州藩を事例として」(『歴史学研究』820、2006年10月68〜76頁)として文章化した。 (2)研究機関を通じて収集した幕末維新期戦没者に関わるデータの整理を行った。各自治体が取り組んできた県史・市町村史等の成果をデータ化することを目的とし、どのような史料が各地域に存在するのかを把握することができたことは大きな成果であった。とくに、今年度は、関東等を中心とする戦没者追悼に関わる文献史料等を入手した。しかしながら、その史料自体を購入できるものは収集したつもりであるが、その膨大な資料すべてをデータ化することは出来なかった。今後の継続的な調査が必要である。 (3)次に昨年度より調査で収集した戦没者墓地関係の写真資料の分析を、ソフトを購入して進めた。これにより、文字資料の調査と、石造物など文献以外の資料データの作成を進めることができたのが特徴としてあげられる。 以上、研究自体はほぼ計画通り進行し、その成果を蓄積することができたが、その間戦没者追悼をめぐる問題はさまざまな展開をみせている。研究を進める中でも、こうした現状を踏まえて、さらなる課題も浮かび上がってきた。今後は、こうした現代的な課題も視野に入れつつ、研究に取り組んでいきたい。
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