平成16年度は明朝档案の解析を中心に研究を推進し、その成果を平成16年10月23日に中央大学人文科学研究所「档案の歴史学」チーム主催で行われた研究会において「遼東馬市信牌档」として発表し、『明清史研究』第1輯に「遼東馬市信牌档-明朝档案の配列を中心として-」として公表した。明朝档案は2001年に広西師範大学出版社から刊行された新出の史料集であり、明代史研究の歴史において、これだけの規模で史料群が新出したことはなかった。しかし、原档案を影印の形で刊行したこともあってか、その検討はほぼ未着手の状況にある。そこで、これらの史料群を読み解く手がかりを掴み、読解法を確立するために、档案のうち、遼東の馬市に関する档案を取り上げ、史料の性格を厳密に検討した。その結果、明朝档案史料集刊行の過程が相当杜撰であり、これらの史料を検討する場合は、档案の前後関係、筆跡、官印などを厳密に検討し、一つ一つ档案の性格を確定する必要性があることを明らかにした。また、同一の題名のもとにまとめられている档案も、詳細に検討してみると、断片的档案の集積であることが分かって来た。従って、同一題名ではあるが、異なる档案の断片が紛れ込んでいる可能性が判明し、また、実際にその実例を発見することが出来た。 また、史料閲覧調査・研究打ち合わせのため、9月に長崎大学・佐賀大学及び九州大学、12月に東京大学東洋文化研究所、京都大学人文科学研究所、九州大学、3月に東京大学東洋文化研究所・中央大学・(財)東洋文庫に赴いた。その他、平成15年の明清史研究の動向を分析し、『史学雑誌』113-5に「回顧と展望 明清史」として公表した。
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