本年度は、科研費最終年度にあたり、引き続き史料の収集および解読を行った。電子資料として公開された、四庫存目叢書中に収められた文集・奏議類から明〜清代の漕運・河北農業経済に関連する文献を収集した。また、昨年度購入した『清実録』DVDを索引代わりに、清代各朝の上諭档も検索、戸部漕運全書・会典事例等の政書に対しても関連史料を渉猟中である。明代史料に比して清代史料は未だ不案内であるが、今後も鋭意読解・分析・整理を継続する予定である。 明代河北の農業経済をめぐる諸変数については、本年度後期に大学講義の機会を利用して「明代畿輔論」と題した内容の論考をまとめた。しかし残念ながら、内容的には未だ発表できる水準に達していない。 なお本作業の過程で、明初期における移住民の実態を解明する必要性を痛感した。ちなみにこの問題に関する情報を集めるべく、夏期休暇を利用し、北京の中国社会科学院歴史研究所を訪問、同所に所蔵されている明代河北在住の同族組織による族譜・家譜の調査を行った。今回は時間不足のために十分なサーベイは行いえなかったが、明初の移住をめぐる史料を引き続き捜してゆく。 また、明代の大運河を通じて14世紀から15世紀にかけ大量に輸送された煉瓦をめぐって、学内紀要に「燕京襍記(1)--北京の城壁」と題した短文を発表した。
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