平成16年度は、唐代前期の儀礼書『大唐開元礼』、北宋期に編まれた『新唐書』の「儀衛志」、そしてこれらに先立つ古典的儀礼書らにおいて軍事がどのように描かれ、また武官がどのような位置づけを与えられているかを分析するための基礎作業として、『開元礼』、『新唐書』儀衛志、および唐以前の沿革が通観できる『通典』巻七六〜七八「軍礼」の典拠・語彙を調査し、注釈を作成した。『開元礼』『通典』の分析を通じては、有事(出征時)における上帝・社・廟に対する祭祀と帰還時の学に対する祭祀、そして平時の年中行事として行われる講武・田猟(仲冬)、射(三月・九月)、大儺(季冬)などが『周礼』等に淵源を持つ古典的儀礼として継承されていることが大筋で判明した。今後は王朝間の継承関係を丁寧に跡づけて、中国専制国家が軍事をどのように国制上に位置づけたのか、そしてそれが兵員徴発制度としての府兵制にどのように結びつくのかを考察していく。一方、『新唐書』儀衛志には「衙」(宮廷内行事における儀仗)、「駕」(宮廷外に出御する際の隊列=鹵簿)の儀仗配置が描かれているが、そこでは儀礼空間における主として武官の配置に焦点が当てられている。そこでこうした空間構成が伝統的卑武思想といかに整合するのかを今後は検討していく必要がある。「儀衛志」にも現れているように武官は軍礼以外の儀礼の場においても儀仗を構成するので、他の四礼の班次にも目配りをしていきたい。以上の課題について16年度に作成した資料データを基礎に掘り下げを行い、17年度中に論考にまとめて公表する予定である。
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