平成16年度におこなった研究は、次の通りである。まず研究遂行上必要な設備を整えるために、国王証書の画像データの解析とデータベース化に必要な、高い処理能力をもつデスクトップPC(SONY VAIO VGC-RA50)、および出力用にA3対応のレーザープリンタ(EPSON LP-7900)を購入し、また調査旅行用に高解像度のデジタル・一眼レフカメラ(NIKON D70)を購入した。つづいて、国内で入手可能な証書の画像データを展覧会カタログや研究書付録から集め、これをスキャナーを用いてデジタルデータ化した。この作業と平行して、証書学および図像学に関する書籍・論文を収集し、研究史の整理と方法論確立のための準備作業をおこなった。8月末から9月初にかけておこなわれた海外調査では、オットー朝の国王=皇帝証書原本の画像データを写真や書籍として収集し、また国王証書の発給業務に深く関与した施設(とくに、教会・修道院・王宮)および原本を収蔵する図書館・文書館を訪問し、現地調査と資料収集をおこなった。帰国後は、これらデータをコンピュータに登録する作業とその分類整理をおこないつつ、972年4月に皇帝オットー2世によって発給された「皇妃テオファヌ婚姻証書」を対象とする最初の研究に着手し、これを1月半ばまでに研究論文(2005年3月末刊行)にまとめた。これによって今年度の成果を公表するのみならず、次年度に継続される課題研究への見通しをえた。
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