平成17年度の研究実績は以下の通りである。 1)19世紀末から20世紀初頭のアメリカ合衆国南西部における先住社会の事例にもとづき、法的地位、土地制度、公教育の三つの領域に焦点を絞り、「市民」'と「インディアン」という法的カテゴリーがいかなる意味をもっていたのかを検証した。その結果は、論文博士号取得論文「『部族』の創出-合衆国南西部における先住社会の再編過程」(一橋大学大学院社会学研究科、2005年8月に社会学博士の学位取得)として発表した。 2)19世紀後半の併合地(米墨戦争後に合衆国領となった、現在の合衆国南西部)において、「インディアン」という法的カテゴリーの内実がどのように変化していったのかを検討した。11月にはニューベリーライブラリー(シカゴ)において史料収集を行い、19世紀後半の合衆国で広く読まれた歴史書やポスターを閲覧した。これらの史料をもとに、「西部開拓」に対する歴史認識のなかで「インディアン」に対するイメージ(ステレオタイプ)がどのように形成されていったのかを検討した。さらに、スペインの新大陸における先住民政策が19世紀の合衆国における先住民政策に少なからぬ影響を与えていることに着目し、スペイン、メキシコ、合衆国による支配の対象となった現在のニューメキシコ州の事例を取り上げ、スペインと合衆国の先住民政策には、法理上の連続性がみられることを指摘した。これらの研究の成果は、「先住民・フロンティア・ボーダーランド-スペイン・メキシコ・合衆国による支配の比較検討」と題して日本アメリカ学会第五回例会(2005年12月10日、於明治大学)において口頭発表を行なった。また、同名のタイトルの論文は、『学際講座アメリカ 第六巻』(ミネルヴァ書房、近刊予定)に所収される予定である。
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