研究概要 |
2004年度は,歴史時代初期国家形成に至るプロセスを把握するため,まず,土器研究を行って時間軸を設定し(「沖縄諸島の土器」小学館『考古資料大観 12 貝塚後期文化』,「広田遺跡出土土器の型式学的編年」『南島考古だより』第72号,「南部九州〜沖縄諸島地域の土器:弥生時代〜古墳時代」,第5回沖縄考古学会・鹿児島県考古学会合同学会研究発表資料集),沖縄・鹿児島においてそれぞれ1本の研究発表を行った(2004年度沖縄考古学会総会,第5回沖縄考古学会・鹿児島県考古学会合同学会20周年記念大会)。 また,夏・冬にかけて徳之島伊仙町喜念・佐弁砂丘一帯遺跡の発掘調査を行い,貝塚と墓域を確認することができた。これらは貝塚⇒墓域というように時期差をもって形成されており,墓は南西諸島において初出形態の墓式であると考えられた。そのため,この遺跡の発掘調査概要を作成し(「徳之島伊仙町喜念・佐弁砂丘一帯遺跡トマチン地区発掘調査概報」『奄美ニューズレター』No.15),また,この墓の位置づけを行うべく,南西諸島地域の先史時代墓制の集成を試み(「南西諸島における先史時代墓制の集成」『東南アジア考古学研究会報告』第2号),その地域ブロック単位での詳細な分析を行った(「南西諸島の墓制(I)-大隅諸島-」『地域政策科学研究』第2号)。 また,本科研費研究の目的のひとつである,交易システムの変化の画期を把握することを目指し,日本人類学会の琉球セッションにおいて,「島嶼地域における交易システムの変動」と題した発表を行い,主に交易の変化の外的要因について整理することができた(第58回日本人類学会)。また,歴史時代の個別研究については,先島諸島地域を中心とし「グスク土器」の煮沸形態の変化と消長,その社会的背景について考察した(「先島諸島におけるグスク時代煮沸土器の展開とその背景」『グスク文化を考える』新人物往来社)。
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