当研究課題「隊商都市パルミラの彫像の指輪からみた古代ローマ文化の受容について」に必要である情報取得のため本年度は以下の三つの作業を行った。 1、2004年7月17日〜2004年8月10日まで奈良県立橿原考古学研究所(所長樋口隆康)が主体として行っているシリア・アラブ共和国のパルミラ遺跡東南墓地H号墓における発掘調査に参加した。その際にH号墓から出土した複数の彫像の中に指輪が使用されているものがあることを確認した。 2、本年度のシリア・アラブ共和国における調査期間中、パルミラ博物館内に展示されている彫像の一部をデジタルカメラを使用し記録をおこなった。その結果、パルミラ博物館内の彫像54体のうち53体が指輪を使用していることが確認された。もしパルミラ博物館から許可があれば、来年度以降、本年度と同様にデジタルカメラを用い、地下の倉庫に所蔵されている残りの彫像の記録をとる予定である。 3、現在可能な限りの古代ローマ帝国下の東地中海世界の指輪・装身具などの関する文献の収集を行った。また調査研究段階で古代ローマ以前のヘレニズム期に関する情報の必要性を感じ、ヘレニズム期およびそれ以前の東地中海世界の指輪・装身具などに関する文献の収集を行った。またパルミラの文化はローマだけではなく、東地中海世界において常に先進地域であったエジプトとの関連性が予測されるため、古代エジプトの文化と情報・知識のネットワークに関する文献の収集を行った。
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