中国東北地方・朝鮮半島および日本列島における古墳時代馬具の比較研究をおこなうにあたって、これまで個人的に未見でありかつ詳細が不明であった日本出土馬具、朝鮮半島南部地域、中国東北地方出土馬具を中心に資料調査を重点的におこなった。資料調査は可能な限り、観察、記録、実測、写真撮影である。 具体的な資料調査機関は、海外では中国遼寧省文物考古研究所、韓国忠北大學校博物館、清州国立博物館、慶尚大學校博物館、釜山大學校博物館、東亜大學校博物館等である。日本出土の馬具としては、元興寺文化財研究所等で資料調査をさせていただいた。調査資料の中でも遼寧省北票県劇嘛洞遺跡出土の馬具や韓国忠清北道鳳鳴洞古墳群、新鳳洞古墳群出土馬具の資料調査では、公開されている実測図や報告に記載されなかった事実が判明し、今後の馬具を通じてみた東アジアにおける交流史研究にとって、重要な成果を得ることができた。 総じて、今後の東アジア馬具研究ならびに馬具を通じて古代の交流関係を研究する上で、非常に有意義な調査となった。以上の成果は現在、論文を執筆中である。また、韓国の資料に関しては、韓国の研究者とともに、共著で韓国の学術雑誌に論文を掲載する予定である(ともに6月刊行予定。韓国の学術雑誌掲載論文に関しては日本語に翻訳して日本の学術雑誌にも掲載する予定である)。 古墳時代の日韓交流を考える上で非常に重要な馬具資料は本年度かなりの数を調査することができたが、未だ調査が必要な資料も多い。来年度以降も引き続き日本国内および中国・韓国の研究者と密接に連絡をとりつつ資料調査を継続していく所存である。
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