1.先行研究等の検討 本研究の理論的枠組みとしての「トランスナショナルな場所」を考えるにあたり、社会学と人文地理学の先行研究を検討した。近年、とりわけトランスナショナリズムに関する研究の蓄積が多い社会学やグローバル化と場所に関する議論が進んでいる英国の人文地理学では、先進諸国の都市部を事例に出現する新しい場所や空間について、流入してくる国際移動者とのかかわりで論じている。それに対して発展途上地域の状況を踏まえ、植民地時代と結びつけて捉える場所のあり方を考えた。また、サモアの首都であるアピアの歴史的な背景を押さえるために、植民地時代のアピアに関する文献を収集し、その特徴を整理している。 2.フィールド調査 8月〜9月における約1ヶ月間、サモアにおいて実施した。その際、首都のアピアにおいて増加しているテーラリングショップの分布を調査した。そして、縫い子を雇用している店舗を対象に、経営者に自身の経歴とビジネスを始めた経緯を中心に聞き取り調査を行なった。また、アピアで小売店を営んでいる人びと数名にも、インフォーマルな形でのビジネスについての意見を聞いた。さらに、ニュージーランドにも滞在し、オークランド大学の研究者を訪問して情報交換を行なったり、サモアに関する文献やアピアの古い地図の収集に努めたりした。 3.研究成果 8月〜9月に実施した予備調査の結果を整理し、研究の途中報告として、11月の人文地理学会の大会では「トランスナショナル場としてのアピア-サモアにおけるテーラリングショップの誕生を事例として-」という題目で、3月の日本オセアニア学会第22回研究大会では「サモア都市部におけるテーラリング活動の発展とその背景」という題目で口頭発表を行なった。また、「衣」の日常実践と「場所」の関係性について考察した論文が『お茶の水地理』に掲載されることが決定した。
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