本研究は市場外流通において活動した仲買人と、彼らと交渉する農家をめぐる関係性を検証し、農作業に関わる計画および農家同士の協同労働についてその実態の考察を行った。 対象とした地域は大阪府泉南地方(岸和田市、泉佐野市)で、おもにこの周辺で活動しているたまねぎ栽培農家を中心にした聞き取り調査を行った。 また明治期から高度経済成長期における農作物流通の実態を把握するため、大阪府立中之島図書館、岸和田市立図書館などを中心に農業関係の行政資料の渉猟および分析を行った。 上記調査資料から考察できた点は以下にあげられる。 (1)明治期において大阪府泉南地方は北海道とならび西洋野菜栽培の先進地として開発が進み、特にたまねぎにおいてはオーストラリアへの輸出も視野に入れた大産地として発展していった。 (2)その過程において、栽培農家と流通を束ねる仲買人による交渉関係は成熟し、仲買人は売れ筋に伴った農家への指導および先物買いを行うといったつきあいが成立していった。仲買人は青田師、ねぎ師と呼ばれ、大阪農業において農産物流通の中心的役割を果たしたといえる。 (3)しかしながら戦後から高度経済成長下において、農協を単位とした市場流通が中心になったことや、泉南タマネギの生産力低下により、青田師の市場での役割は急激に低下していった。 (4)現在では泉南タマネギ農家は専業による大型経営および極小規模の栽培に二極化している。しかしながら歴史的過程において蓄積されたつるしねぎなどの保存知識と技術は栽培農家において継承されていることが確認されている。 上記観点に基づいて現在成果報告をまとめている途上である。
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