初年度となる平成16年10月には、これまで収集してきた文献を整理し、韓国華僑の研究史に関する論考「変化する韓国華僑への‘まなざし'」を、韓国・朝鮮文化研究会の学会誌『韓国朝鮮の文化と社会』3号に公表した。本研究で必要とされる調査は、多数の調査対象者を相手にした設問調査的な調査と異なるため、インフォーマントの人数をある程度しぼった、信頼関係を基盤とした人間関係づくりが欠かせない。2005年2月から3月にかけて3週間、台湾に滞在し、台湾社会の把握に努めるとともに、インフォーマントとなる韓国華僑の一家をつかまえ、韓国から台湾に移住するきっかけやその後の経緯などについて少しずつ話を聞き始めるとともに、平成17年度夏期に予定しているインタビュー調査に不可欠な人間関係づくりを行った。平成17年3月には『神田外語大学紀要』17号に、釜山華僑街を中心テーマに扱った「釜山華僑街"上海通り"に上海はみられるのか?:‘複製'の成立条件をめぐって」を寄稿した。また、韓国に行き、ソウルでは近年に刊行された華僑関係の資料を追加購入し、韓国国会図書館と国立中央図書館にて文献複写を行った。釜山ではインフォーマントになりつつある50代の韓国華僑から話を聞き始め、語学学校を経営する韓国華僑夫婦とコンタクトをとり、人間関係づくりを行った。また新たに中華料理店を経営している韓国華僑にも少し話を聞きながら、今後の重要なインフォーマントとしての可能性をつなげた。また帰国後も、台湾在住の韓国華僑の親子に連絡をとるなど、今後の関係をつなげていくための行動を続けている。
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