2年度目となる平成17年度には、5月に開催された第39回日本文化人類学会研究大会で「‘上海通り祝祭'にみる土地とイベントの結びつき:韓国・釜山華僑街の事例から」を発表し、7月には2本の論考「外来食の‘現地化'過程:韓国における中華料理」と「海外移民にともなう‘韓国式中華料理'のグローバル化」を『アジア遊学』77号に載せた。これらは、一見して研究課題と外れるようにみえるが、韓国における中華料理は韓国華僑の歴史と重なるところが多い。また彼らは警戒心がとても強いために、中華料理などの話を中心に拾うことで彼らの軌跡を追わざるを得なかったという事情がある。さらに7月から8月にかけて1ヶ月間の台湾での現地調査のなかで、韓国華僑の場合、料理師という職業によるネットワークがあったことを知ることができた。今後の調査でより追究することでこれまで想定していた韓国コミュニティ・ルートとの関係以外にも、中華料理と関係した独自のネットワークの存在を明らかにできる。また8月から9月にかけて中国・黒竜江省と遼寧省での現地調査では、韓国からの人的移動が多く、中国朝鮮族という韓中両国語を使いこなせるコミュニティがあっても、彼らの故郷とされる山東省以外、つまり故郷とのつながり以外では、その存在があまりみえないことも確認できた。11月には国際シンポジウムである第9回中国飲食文化学術研討会(台湾)で、中国語による「‘韓式中國菜'的出現與普及:料理的‘在地化'與‘再在地化'」の発表を行った。また個人的に2月にも韓国を訪れ、釜山で人脈をつなげるとともに、簡単な補足インタビューを行っている。中途採用であった1年目に続き、実質的な調査の足固めを行った1年といえる。そのほか、日本在住の他の韓国華僑研究者とも連絡を取り合い、いずれ共同研究も行えるように常に情報交換を行っている。
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