本研究は、日本におけるウミガメの捕獲、食に関する実態を映像や文字で記録するとともに、祭祀にかかわる習俗についても記録することを目的として開始した。研究代表者は、これまでも日本列島各地で、ウミガメの捕獲、食にまつわる聞き取りを行ってきたが、本研究では、ウミガメの生態学研究グループである日本ウミガメ協議会の全面的な協力を得て、捕獲、解体、食にかかわる場面の映像記録をとることにした。平成16年度には、和歌山県串本町と高知県室戸市において、アカウミガメの捕獲・食に関する現地調査を行った。このうち、高知県においては、アカウミガメの解体場面の撮影に成功した。 平成17年度には、和歌山県串本町でアカウミガメ、沖縄県石垣市、竹富町で捕獲・食に関する調査を行った。このうち、和歌山県では、16年度同様、漁船に同乗させていただいたが、海流の関係から、ウミガメを見ることすらできなかった。沖縄県では、最後のウミガメ専門の漁師が最近引退したことが判明し、捕獲・解体に関する場面を撮影することは困難な状況であることが分かった。ウミガメ食調査は、自然環境にも大きく影響され、また、捕獲者がいなくなりつつあること、食べる人もいなくなりつつあることが判明した。今後の調査はきわめて困難な状況にあるが、科研終了後も、和歌山県、高知県、沖縄県では継続して調査を行っていく予定である。捕獲・食に関する研究成果は、漁民が公表を嫌う傾向があるため、インフォーマントとの相談のうえ慎重に進めていく予定である。 17年度には、捕獲・食に関する調査とともに、ウミガメの供養習俗についても積極的に調査を進めた。食にかかわる供養もあるが、食にかかわらない供養習俗も含めて調査を行った。17年度には、供養習俗については、兵庫県南あわじ市、岡山県瀬戸内市、三重県紀宝町、宮城県石巻市、同県七ヶ浜町、青森県風間浦村、同県大間町、同県佐井村、静岡県沼津市、同県焼津市、新潟県佐渡市で現地調査を行った。こうした調査によって、食にかかわる供養は、青森県から佐賀県までにいくつか見られるものの、事例としては多くはなく、かえって食にかかわらない供養習俗が多数存在することが分かってきた。食にかかわらないウミガメの供養習俗は、時代的には江戸中期(享保期)から現在まで存在し、地域的には青森県から鹿児島県まで存在するようである。この供養習俗に関する成果は、来年度、学術雑誌に論文として投稿する計画である。
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