本年度は、合意の比較法的研究に着手し、とりわけイタリア私法関係文献を収集するよう意図していたが、いくつかのテクニカルな問題によりこれが実現しなかったことは遺憾である。しかしながらそのかわり契約法を中心とする私法各分野の文献をイタリア以外の国のものも含め広く収集することができたので、来年度の研究の基盤を築くことができたと考えている。 また本務校における業務の関係で国際古代法史学会に出席できなかったものの、時期をずらして渡欧し、オランダ・ロッテルダム、ドイツ・ケルン、テユービンゲン、ミュンヘンをおとずれることができたのは有意義であった。在外研修中はそれぞれの地のローマ法研究者(ディーター・ネル ミュンヘン大学名誉教授、アルフォンス・ビュルゲ ミュンヘン大学教授、ティツィアナ・キュージー ザールブルッケン大学法学部教授、ハンス・ディーター・シュペングラー エアランゲン大学法学部教授、ヴォルフガング・カイザー チュービンゲン大学教授、ラウレンス・ヴィンケル ロッテルダム大学教授他)と意見交換をはかると共に、ケルンではローマゲルマン博物館を見学し、ローマにおける契約を具体的にイメージする上での示唆を、数々の考古学的史料から得た。またミュンヘンでは、一般には公刊になっていない合意と契約に関する論文を発見することができ、来年度はこれも詳細に検討するつもりである。 さらに、諸外国の研究者との連絡と資料収集の便宜を考え、パソコン環境の充実をはかるため、モバイルパソコンやヴァーチャルPCなどを導入した。このことが、来年度の研究に資するものと考えている。
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