慣行の検討に先立って、中華民国時代の法学者の不動産法に関する学説と大理院・司法院の慣行に関する資料を現在可能な限り収集した。特に民国時代の法学説に関しては2004年から2005年にかけてリプリント或いは再編集された上での出版が大規模に行われたため、中国或いは日本国内において収集に努めた。 慣行に関しては「『支那都市不動産調査報告書』草稿」のテキストデータベースを作成し、検索に便ならしめた。引用資料に関して、まだ不十分な点があるため、校正と補充を平成17年度以降も行う予定である。また、同データベースを用いて、中華民国時代の都市不動産慣行について論点の抽出を行った。重要な論点としては1)名称を変えながらも清朝末期から使用され続けた各種文書の整理とその意義の再確認、2)永租権等、租界における独特の不動産慣行がもたらす摩擦、3)中国人による租界不動産慣行の利用といったものがあげられる。 調査活動としては、国内においては、東京大学東洋文化研究所で不動産慣行調査資料、国策研究機関報告書の蒐集を行い、国外においては上海市档案館および香港歴史档案館において、契約文書、裁判資料の所在を調査・蒐集した。連合王国ケンブリッジ大学が所蔵するジャーディン・アンド・マセソン社のアーカイヴにおける調査は、同アーカイヴの公開性が低いため、本研究期間内に何等かの形で閲覧許可を受けることを期して、今年度は断念した。但し、同国National Archivesにも、同等以上の価値を有する文書資料が所蔵されることが明らかとなったため、今後の調査対象に含めることとしたい。
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