本年度は3カ年に及ぶ本研究の最終年度であったものの、昨年度の研究進捗に遅滞が見られたため、予定通りの研究の完成にはやや及ばなかったことが遺憾である。しかしながら、まず、昨年度に引き続き、研究課題に関する邦語・欧米語の文献の収集に努めるとともに、現代フランス憲法学基礎理論の分野における代表的論者であるミシェル・トロペール(パリ第十大学名誉教授)の重要な論文を3本翻訳することができた(九州大学法政学会編「法政研究」73巻2号、3号および4号に掲載済み)のは、大きな研究成果の一つである。 さらに、憲法の解釈とは何か、憲法学説とは何か、そしてそもそも憲法学とは何か、という、本研究に通底する根本的な問いについて、昨年度までのフランス法理論を参照した研究の成果として、「憲法・憲法解釈・憲法学」と題する論文を、安西文雄=南野森ほか『憲法学の現代的論点』(有斐閣、2006年4月刊)の巻頭論文として公表した。また、同書には、直接本研究とは関係しないものの、本研究で得られた理論的成果を方法論上用いた研究の成果である、「司法権の概念」と題する論文も所収されている。関連して、同様に、「裁判官の良心」と題した判例評釈も1本公表した(2007年3月刊)。 なにより、3カ年にわたる本研究の最終的な成果として、2007年5月刊行予定の『岩波講座憲法第6巻-憲法と時間』(岩波書店)に、「『憲法』の概念-それを考えることの意味」と題した論文を寄稿できたことには、ひとまず満足している。 なお、2006年9月にはフランスに渡航してフランス人研究者と合同で開催した「日仏公法セミナー」において、「法治国と民主政」と題する研究報告を仏語で行い、活発な意見交換を行う機会を得ることができた。この報告は、2007年中にフランスにおいて出版される予定である。
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