標題のテーマにつき、今年度は文献調査、資料調査を中心に研究を進めた。とりわけ、2004年2月制定の欧州連合閣僚理事会指令において「競争的交渉方式」が導入されたこと、及びわが国においていわゆる「公共工事品質確保法」制定が検討されていることに着目し、これを研究の中心的ターゲットと位置付けた。現在、「交渉方式採用と競争性の調和」「交渉・対話における透明性確保」「技術評価体制と不服申立て体制の充実」といったサブテーマを設定し、標題の研究を進めている。なお、この関心の下、昨年9月に中国・北京(世界貿易機関(WTO)政府調達協定加盟国ではないが、同協定を意識しての政府調達改革に最近積極的に取り組んでいる)を訪問し政府調達関連専門家と情報・意見交換を行い、また今年3月にはWTO及び欧州各国の政府調達部門を訪問しインタビューを行った。(1)中国政府調達改革が米国や欧州の政府調達改革をモチーフとする一方、日本の政府調達制度・運用の問題性を意識しつつ進められたことの把握、(2)同国政府調達の実務が地方自治レベルでは十分に機能していない状況にあることの把握、(3)WTO政府調達協定が広い意味では入札談合対策をも射程に入れていることの把握、(4)同協定が自由貿易協定(FTA)との関係で形骸化しつつあるという問題性があることの把握等、有意義な成果を得ることができた。これら(文献・資料調査及び海外調査訪問)の結果を受けて現在、「政府調達における競争的対話-いわゆる品質確保法について-」と題する論稿を作成中であり数ヶ月中には何らかの形で公刊する予定である。
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