1.本研究は、WTO加盟後の中国の市場開放及び市場経済化に関連した法制度・運用等を調査・研究をし、WTO法及び中国のWTO加盟条件の義務に適合的か検討し、かつ中国の国際法遵守姿勢を解明することを目的とする。 2.4〜7月は、中国関連法制及びWTO法に関する書籍・資料を中心に購入し、インターネット・レクシス等を活用し、法制度・運用等の情報収集・分析に努めた。 3.8月7日、名古屋大学CALE・WTOキャパシティビルディング研究会において、「中国によるWTO上の義務の履行状況について」と題する報告をし、国内研究者と意見交換を行った。同月18〜25日、中国・北京に出張し、中国・商務部・国家工商行政管理総局担当官、大学研究者、現地法律事務所弁護士、ジェトロ北京センター担当者、企業実務家に中国のWTO履行状況、反壟断法(独占禁止法)起草作業についてインタヴューを行った。また、9月に後掲論文「対中国経過的セーフガード規定」を公表した。10月15日、ジェトロ金沢貿易情報センターにて、「WTO加盟後の中国の動き-WTO約束履行状況と日本政府・企業の戦略」と題する講演をし、企業実務家と情報交換を行った。 4.以上の研究を通じて、以下の各点が明らかとなった。現在、一部を論文として公表するよう準備中である。 (1)WTO加盟前後を通じ、中国の法制度改革は全体として進展しており、中国政府のWTO法遵守の努力は評価できる。特に、関税等の物の貿易での遵守は顕著であり、サービス貿易・知的財産権に関しても明白にWTO法違反となる法令はほぼ改正済みである。但し、一部、原則自由化後も制限の余地を残す規定、反ダンピング措置の活用、知的財産権保護の実際の運用面等に問題があり、今後も注視が必要である。 (2>反壟断法起草作業は、大筋の内容は固まり、国務院法制室での検討段階に入ったが、反壟断当局の位置付け等権限配分をめぐり争いがあり、早期の制定は期待できない。2004年8月の調査時点から2年程度かかると予想される。
|