1.本年度を通じ、中国法制・WTO法関連書籍を購入し、インターネット・レクシス等を活用し、法制度・運用等の情報収集・分析に努めた。 2.平成17年7月28日、セミナー「中国の通商問題に関する最近の動向」に出席し、中国の輸入救済措置状況、知的財産権問題、独占禁止法制定作業について情報収集し、中国人弁護士と意見交換を行った。 3.平成17年8月22日〜23日、名古屋大学・中国政法大学共催「WTOの理論と実務に関する日中国際シンポジウム」(中国・北京)において研究報告を行ったほか、中国側研究者・実務家と輸入救済措置活用状況等について意見交換を行った。 4.平成18年3月12日〜17日、中国・上海を訪問し、上海の各研究所・大学の研究者、ジェトロ上海所長、弁護士に中国のWTO法履行状況、反壟断法(独占禁止法)制定作業について聞き取り調査を行った。 5.以上により下記の点が明らかとなった。現在、平成18年10月の国際政治学会・部会報告に向け、また一部を論文として公表するよう、準備中である。 (1)中国のWTO加盟約束履行の努力の背景には、同国が和平崛起(平和台頭)の大戦略の下、周辺国に脅威を与えぬよう国際体制内で責任ある大国の役割を担うことに注力している姿勢が強く作用していること、昨年度把握した原則自由化後も制限の余地を残す貿易権規定運用は継続していること、中国の地方指導者にとって知的財産保護が重要課題として既に設定済みであるため、今後保護強化が期待できることが把握できた。 (2)独占禁止法制定作業は、2006年中頃に全国人民代表大会常務委員会による検討に入る予定であること、国務院法制室提出法案では行政的独占規定が削除されたが、その背景に権力分配問題により制定難航を避け、市場開放が進む中国内での外資企業の市場力濫用行為に有効に対処する体制を一刻も早く確立したいとの考えがあることが把握できた。
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