本年度の研究実施計画としては、(1)本研究の基盤となる理論的枠組みを仮説として構築し、(2)諸外国とわが国との間の具体的強制執行方法の相違点の検討(次年度以降)の準備作業を行う、という2点を挙げていた。 この点、(1)については、外国判決を承認することと執行することとはどのような関係に立つのかを明らかにすべく、両者の間には、特別手続を必要とするか否かという点で違いがある点に着目し、論稿にまとめた(「外国判決『自動承認』制度の意義(上・下)」(西南学院大学法学論集37巻2・3号、4号)。本稿において、外国判決を承認するということは、外国判決を契機に生じた、当事者間の実体的法律関係の変動をわが国においても尊重することを意味する点を明らかにした。本研究で問題としているような、具体的実現方法たる執行方法が異なる法を準拠法とした外国判決の場合には、どこまでを「実体的法律関係の変動」と読み取ることができるのかを精査する必要があり、この点が本研究の核心となる。来年度以降、この点を、諸外国(とくにドイツ・アメリカ)の具体的執行方法の違いを調査しながら、明らかにしていくことにしている。 また、(2)については、今年度は主としてドイツ・日本の離婚後の扶養料支払いに関する文献を調査し、購入することができた。来年度はドイツ以外の文献も平行して調査しつつ、これらの文献の調査を進め、(1)に関して述べたように研究を進める予定である。
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