第一に、日本とドイツに存する文献等を通じて、2003年から2004年にかけて行われたドイツ解雇制限法の改正状況(1条aの導入)と、「ハルツ(Hartz)」法など新しく導入された雇用政策法の検討を行った。その結果、当事者の合意に基づく金銭賠償解決システムという、雇用政策と密接な関連性を有した制度を導入することが解雇制限法改正(2004年施行)の大きな柱となったことを明らかにできたが、この制度の利用については労働契約当事者に主導権があるため、法政策的な効果が減殺されるとの危惧が指摘されている点を知り、この点を法的に詳細に分析した。この制度がどのように利用され、法的にどのような論点が生じているかをドイツで改めて調査することが次年度以降の課題として残った。 第二に、ドイツにおける解雇法と雇用政策法の相互関係を分析するための比較モデルを得るためにも、日本の解雇法や雇用政策法の相互関係がどのようになっているかをまとめることが必要となり、この点について論文を執筆・公表した。この論文は、ドイツでの実態調査に生かすためにも、日本語だけでなく、ドイツ語でも作成し、ドイツの研究者と意見交換できるようにした。
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