第一に、ドイツへの訪問や国際会議などへの参加を通じて、解雇制限法と雇用政策法の相互関係に関する調査、資料収集を行った。とくに、2004年1月1日から施行されたドイツ解雇制限法の改正法は、雇用政策を意識して制定されたものであるため、この制定過程とその後の議論状況を丹念に調べた。その結果、解雇制限法の規制緩和が即時的に雇用政策的効果を持つものではないが金銭解決制度の導入や解雇制限の適用範囲などに関して、雇用政策を意識して解雇規制が変容しつつあることを明らかにできた。 第二に、第一の点とも関わり、解雇の金銭解決制度が、どのような意義や問題点を有するかを調査、研究し、ドイツの金銭解決制度の現状について、ドイツの学説の中でどのような議論がなされ、どのような立法提案がなされてきたかを明らかにし、その問題点を分析した。具体的には、解雇の理由に分類して(例えば、経営上の理由あるいは非解雇者選定に問題がある場合に限って)金銭解決を提案する意見があり、金銭解決制度を導入する場合でも、解雇事由との関係を調べる必要があることを明らかにした。
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