本研究初年度である平成16年度は、文献による理論研究と国内調査を通して、本研究課題に関する焦点の絞り込みを行った。特に、理論と実践の架橋を意識し、NPO法人はもちろん、社会福祉協議会、国民健康保険団体連合会など公的性質を帯びた中間団体の活動調査を積極的に行い、実践からの問題抽出をねらった。これらにより得られた知見は以下の通りである。 1.ひとくちに中間組織といっても、その定義自体に国際的共通理解があるとは言えず、我が国に限ってみても、NPO法人、公法人(保険者など)、社会福祉協議会などその有り様は多様であり、NPO法人についても、利用者共同体的組織、専門家により設立された組織、地域共同体組織など多彩である。中間組織の組織形態、財政、活動状況、課題等が明瞭になった。 2.我が国においては、宗教的慈善活動の社会的背景を持たないため、現在のところNPO法人をはじめとする民間団体の育成および公法人等の権利擁護機能強化が課題であるが、現場では法制度の整備を望む声が強かった。 3.広義の権利擁護システムであるサービスの質評価において、中間組織の役割は増大しており、また、行政と中間組織のコラボレーションが進展しているが、行政の関与は中間組織の「中間性」を阻害する要因ともなり得、その協同の在り方が問題となっていることが明らかになった。 4.権利擁護としての苦情解決において、各中間組織の苦情解決対象範囲が限定的であるため(多分に法制度上の問題であった)、利用者がたらい回しにされているケースが多々あり、ワンストップの苦情解決システムを構想する契機となった。 なお、本年度は焦点の絞り込みに当てたため、本研究に直接関わる活字での研究発表は行っていない(研究会での報告は行った)。
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