研究代表者は、平成16年度に、ドイツの従属的自営業者の典型例といわれる外勤セールス(代理商)のための特別法である商法典の規制を検討し、これらの規制が特約店及びフランチャイジーの契約にも類推適用されること、さらに約款規制法(民法典305条以下)により、一方的に、代理商、特約店及びフランチャイジーに不利益を課すような、不当な契約条項が無効とされることを明らかにした。今年度は、これまでほとんど注目されてこなかった自由業(典型的職業は、医師、弁護士などの国家資格を必要とする知的専門職業)の法規制について検討を着手したいと考え、8月にはドイツで資料収集及びインタビューを行った 西欧では、自由業の歴史的沿革は、中世に遡り、大学教育の終了が資格取得のために必要とされた3つの職業(医師、法律家、聖職者)に大学教授を加えたプロフェッションが現在の自由業の沿革である。プロフェッションの主な特徴は、専門性、公益性及び独立の職業団体による自主規制と解された。近代以降、プロフェッションに含まれる職業が拡大する傾向が見られ、プロフェッション研究は、1970年代に社会学において盛んとなり、わが国でもいくつかの本格的研究も行われたが、その後衰退したようである。 しかし、近年、国境を越えた経済活動の進展に伴い、国家の枠を超えた職業団体による自己規制に注目が集められている。EUでは、これら自由業だけでなく、手工業・工業および商業において、何らかの国家による規制を受けている「規制された職業」の職業資格をEUレベルで相互に承認し、構成国内において自由に営業することを認める、職業資格承認指令が2005年6月6日に成立している。職業資格承認指令と同様に、国境を越える経済活動の自由化を進展する立法として、EU憲法条約の否決の原因となったサービス指令案も、最近可決されたようである。 職業団体の法的研究の第一歩として、今年度は、職業資格承認指令とサービス指令案に関する検討をまとめることができた。その他、今年度は、ドイツ労働法の重要な論点に関して、最近の動向を検討した論文も執筆している。
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