本年度も、裁判員制度下における刑事司法情報・刑事事件情報の報道についてあるべき法政策を提言するという本研究の目的に沿って、昨年度収集した基礎資料および本年度さらに収集した資料を活用して、刑事司法情報と刑事事件情報それぞれの公表のあり方について検討を行った。第一に、刑事司法情報の報道に関しては、近年の主要な刑事立法について、提案されてから成立に至るまでに行われた報道を情報源ごとに分類したうえで、各々について立法に賛成方向か、反対方向かをさらに分類し、報道全体の傾向を分析した。その結果、刑事立法に関する報道においては圧倒的に立法促進側の情報が優位に立っていること、かかる報道の傾向が立法をますます促進させる要因として働くことを実証的に明らかにすることができた。この分析の成果は、「マスメディア報道が刑事立法に及ぼすインパクト」と題する論文として公表した。第二に、刑事事件情報の報道に関しては、昨年度に引き続き、重大事件の弁護を行った弁護士から報道が防御活動に与えた影響や問題点についての聴き取り調査を行った。その結果、報道だけでなく、報道機関の取材への対応を余儀なくされることにより弁護活動に支障を来たす場合があることが新たに明らかになった。本年度までの研究である程度のサンプル数を収集できたので、来年度において、さらに補充的調査を行いつつ、最終的な分析結果をまとめ、裁判員裁判のもとで事前の有罪視的予断を有していない裁判員を確保するために取られるべき政策を提言したい。
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