本年度は、金融機関および会社以外の組織体等、特殊な組織に対する行政的規制にどのようなものがあるかを調査し、これが会社法等一般法とどのような関係に立つかを検討した。 本年度の研究は、3つのアプローチをとった。第1は、金融機関の破綻規制のあり方に関する研究である。「破綻銀行の元取締役の融資決裁と善管注意義務-札幌地判平成14・9・3破綻銀行の元取締役の融資決裁と善管注意義務-札幌地判平成14・9・3」は、金融庁による貸出しガイドラインがどのように銀行取締役の責任のあり方に反映されるか、民事責任に影響を及ぼすかについて述べている。第2は、非営利団体の規制に関する研究である。入会団体による山野の利用のあり方に関する研究(2004年6月東北大学民法研究会発表・未公表)は、明治期以来の行政による介入が、私権それ自体のあり方を左右してきたことを示している。第3は、登記を通じての一般事業会社の把握のあり方を理解し、それが日本による会社の民事的・行政的コントロールにどのようにつながるかについて、国際私法を通じて論じていくアプローチである。これらはそれぞれ、私法と行政レギュレーションとの協働関係を正面から取り扱うものとして、高い新規性を有していた。 行政が実際に行っている業界への影響力行使についてのより行政学的観点からの研究は公表に至っていないが、一般的に世間の関心が高まっていることもあり、今後はより容易になっていくであろう。なお、本年度は、同族企業とよばれる家族企業のパフォーマンスについて、業種別に非同族会社のそれとの国際比較を行う共同プロジェクトに参加し、情報交換のため渡仏した。このプロジェクトは現在手法等について模索段階にあるが、多くのサンプルについて経年比較を行うことで、業種・株主分布・事業規模別に存在する各種規制とパフォーマンスとを比較することで、行政による企業把握の影響についても評価が可能になると期待される。
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