本年度は、技術革新とそれに伴う規制の変容のなかで活力の維持増進に取り組む諸業種について、一般的なコーポレートガバナンスの観点からはコンプライアンスやCSRと呼ばれる取り組みについて考察を深め(2005年11月麹町にて・学振プロジェクト予備発表)銀行の融資業務に関するまた業種のなかでも、特に銀行規制のあり方についての研究を行った。 前者については、研究の過程で、特に新会社法の制定に伴って、複数種類の株主の要望が食い違う場合の調整のあり方等について問題が生じていることを認識した。一般法たる会社法が特段の規制を定めないことが、規制の追いつかない現状の一因とも考えられる(b)。立法過程から各業種を所轄する担当官が明確な問題意識を持ち、ガバナンス自体に踏みこんだレギュレーションを制定する必要が高まっているように思われた。 後者に関しては、銀行の融資業務に関する手続きのマニュアル化・透明化が結果として銀行の健全性とどのように連動するかについて考察し、プロセス規制が実体規制となっていく仕組みに関する以上の考察をもとにして、融資規制についても執筆を行った(d)。手続き規制をよりマクロ的に考察すると、銀行業務には構造的に規制によるコスト増加という特色があることが看守された。これへの対応の一環としてコングロマリット化による金融事業全体としての安定が図られていた。ここからは、将来的な銀行の預金業務離れが予想されるのであり、家計が金融から隔絶されないために直接投資の必要性が痛感された。 なお、今年度は、証券取引不祥事が続き、証券取引レギュレーションに関する研究は休止したが、年度の後半には、学術振興会プロジェクトにおいてジョイントで研究を発展させていくめどをつけることができ、引き続いて同様の問題意識のもと研究を進めていく予定である。
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