平成17年度は前年度の研究を継続し、ドイツ債務法改正が実務に与える影響、特に、企業買収契約における影響について研究を行った。具体的には、債務法改正によって惹起された企業買収契約実務における法的不安定性を除去するために、野党CDU/CSUにより連邦議会に提出された民法改正案と、連邦政府から出された対案の審議過程について検討し、2004年末に政府案通りに可決成立した民法改正法についての研究を完了した。その研究の過程で、中間報告として、平成17年4月に神戸大学民法判例研究会において「債権法改正によって惹起された企業買収実務における法的不安定性の除去のための民法典改正について」というテーマで研究報告を行い、参加者から有益な批判をいただいた。さらに以上の成果をまとめて「ドイツ債権法改正によって惹起された企業買収実務における法的不安定性の除去のための民法典改正について」として横浜国際経済法学に公表した。本論文については、田中宏治「ドイツ新債務法444条と企業買収」阪法55巻5号1頁以下において、高く評価された。 以上の研究と並行して、損害担保責任についての派生的問題として、その証明責任の分配の問題についても研究を行った。その結果、保証ないし損害担保を帰責事由として位置づけた場合における証明責任の分配の問題について、一定の示唆を得ることが可能であることが明らかになった。この研究で得られた成果は、現在議論が高まりつつある、債務不履行の帰責事由の証明責任の問題についても一定程度の寄与をしうるものと考えられる。この成果については近々公表予定である。 さらに今後は企業買収契約と民法法理の関係一般についても研究を進めていく予定である。
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