アメリカにおいて多様化している調停モデルについて、結果志向のアプローチである「Problem Solvingアプローチ」と手続(当事者)志向のアプローチである「Transformativeアプローチ」について、それぞれのモデルの目的、紛争観、人間観、調停者の関与手法、当事者の感情の位置づけなどについて検討した。 結果志向アプローチによる調停者の関与手法としては、当事者間の紛争について互いの利害関係(ニーズやインタレスト)を明らかにすることにより解決されるべき問題を発見しようし、中立第三者である調停者が当事者間の争点を定義し、当事者が合意可能な解決に到達することを「援助」するとされる。利害関係や取引可能性が重視されるため、当事者の感情を極力排除するという方法がとられるが、これにより調停者は中立的介入を装いながら調停プロセスや解決内容のみならず当事者自身をコントロールする結果となるところに問題がある。これに対して、手続志向アプローチにおいては、反復、傾聴などの手法で、紛争当事者をポジティヴな方向にシフトさせることに調停者の役割があり、当事者自身によって解決策に到達することに意義がある。 この手法が示すのは、現在、調停のみならず裁判手続においても主流である争点を確定しそれを解決するという問題解決アプローチ的紛争解決手法のほかに、争点確定を主眼とせずとも当事者に十分語らせ、調停者が傾聴するプロセスにより当事者が自らの力で紛争を解決するという手法の存在であり、今後、調停以外の紛争解決をめぐる分野にも応用可能であると考えられる。
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