患者以外の第三者に対する診療記録の開示について、具体的な場面類型ごとの検討を行う前提として、わが国における診療情報の第三者提供をめぐる法状況を総論的に考察する作業を行った。 わが国において医師による診療情報の第三者提供を規律する法制、つまり医師の守秘義務法制は、複数の異質の法領域にまたがって存在している。このように、あるテーマが複数の異質の法領域に関わって展開する場合、それぞれの法領域において当該テーマを分析し、各法領域間相互の関係を整理し、最終的には一貫した法体系として統合的に説明する必要があろう。この目的を達するために、一つの有効な手段として、「診療情報の性質による保護レベルの違い」という視点による類型化という方法を採用し、以下のような結論を得た。 レベル1 個人情報-個人情報保護法による保護を受ける レベル2 プライバシー情報-刑法134条1項、不法行為法(プライバシー侵害)、契約法(診療契約上の付随義務違反)による保護を受ける。 (レベル2の亜種)拡大されたプライバシー情報(レベル1に限りなく近接する範囲の情報)-事情によっては、不法行為法(プライバシー侵害)、契約法(診療契約上の付随義務違反)による保護を受ける。 レベル3 一定のセンシティブ情報-特定の感染症と精神疾患に関する情報が特別法による保護を受ける。 レベルX 固有の特殊な要素を有する情報(遺伝情報、家族歴)-特殊な措置や考慮が必要
|