法律の学習者を対象とした学習支援ツールとしての判例データベースを構築するために、本年度は、以下の研究を行った。 (1)国内外の判例データベースやインターネット上の法情報に関する調査を行い、検索手法および検索結果の提示方法などの事例を集積して、法学教育における効果等について比較検討を行った。 (2)その上で、判例検索システムが備えるべき機能を洗い出すとともに、類似検索や検索履歴を用いた新たな検索手法の開発を行った。具体的には、判例それぞれについて、書誌情報・全文情報の他に、審級関係や引用関係、参照法令や判例に表れるキーワードをメタデータとして含む判例オブジェクトを定義し、判例オブジェクト相互の関係を判例ネットワークとして組み立てることで、判例の分類や重み付けに応じた検索を行うためのモデルを設計した。 (3)また、判例データベースシステムを構築するにあたり、実験用データ(判例および法令)の収集と、分類・加工を行った。実験用データは、インターネット上で公開されている法情報、とりわけ最高裁判所ホームページ掲載の判例集並びに総務省・電子政府の総合窓口で提供される法令データを利用した。実際には、判例や法令は日々新しいものが生み出され公表される。実効のあるデータベースを構築し運用するには、それら新しい情報をいかに効率的に取り込むかがひとつの課題であると言えるが、本研究では、それらインターネット上の法情報を自律的に収集するエージェントのプロトタイプ開発を行った。 (4)そして、(2)において設計したシステムアーキテクチャに基づいて判例データベースシステムのプロトタイプを構築した。そこでは、判例オブジェクトのメタデータとなる裁判所名や事件番号等のデータ構造を実際に定義し、実装した。
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