中国の排出規制システムに関わる研究では、まずその全体像を把握するため汚染物質ごとの規制システムを整理した(この成果の一部は『世界の規格便覧』にて年内に出版予定)。次に、現状の排出規制システムの特徴と課題を明らかにするため、現実の運用の際の重要な規範となる地方法の分析を進めると同時に、行政訴訟に関する資料の収集、分析を行った。この結果、地方の環境行政部門は、課徴金(原語は排汚費)と行政罰としての過料(原語は罰款)を社会への「危害性」に基づき区別しており、この「危害性」に関する基準が明確に定まっておらず(そもそも客観的な設定が困難な基準であるが)、不安定な制度運用に影響を与えていることが明らかとなった。これらの排出規制に特徴と課題については、2005年10月に開かれるアジア法学会研究大会において報告予定である。また、汚染課徴金制度に関しては2004年7月より課徴金の徴収手続及び徴収した資金の管理手続が改正されており、これらの改正点を整理し、来年の国内学会で報告する予定である。 環境紛争に関する法システムの研究では、北京で活動するNGO(汚染被害者法律援助センター)から提供された資料をもとに中国における環境紛争の状況把握に努め、その中でも1600人以上の原告団が福建省寧徳市の化学工場(主な生産物は塩素酸カリウム)を訴えた訴訟事例に着目し、昨年9月と本年3月にそれぞれ現地調査を実施した。当該訴訟については本年1月に寧徳市の中級人民法院が和解の提案を出しているが、原告の要求する賠償額と被告が主張する賠償額との差に50倍近い差があり、和解が成立するかどうか定かではない。昨年9月の本訴訟に関する調査結果は、本年1月7日に開かれた中国環境問題研究会(環境パートナーシップオフィス・東京)において報告した。
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