3年計画の2年目にあたる本年度は、前年度からの課題の継続と新たな課題への挑戦という、二つの柱を立てて研究を進めた。継続の要素としては、州際通商委員会の形成過程に関する分析を、4月の中西部政治学会、9月のアメリカ政治学会での報告を節目として論文を改稿していく形で進めた。その過程では、全く新しい類型の機関の設置としてとらえられてきた州際通商委員会が、実際には多分に裁判所という制度類型に依拠しながら構想されたことが明らかになった。裁判所が法律家という専門職によって運営されていることを考えれば、それが新たな専門家機関を作る際のモデルになるのは、決して不思議ではなく、学会発表でも好意的なコメントが得られた。 新しい課題としては、経済専門家が主となって運営される連邦準備制度理事会がいかに形成されたのかの分析に着手した。州際通商委員会が設置された19世紀末には、経済学が学問分野として未成熟だったのに対して、連邦準備制度理事会が生まれた1910年代には、経済学の学界も発達し、経済学者がこの機関の形成にも深く関与している。先行研究では、経済学者の存在が自明視されているが、今後本格的に分析を進めるにあたってはなぜ彼らが経済政策の形成過程に参加しようとし、また参加できたのかに立ち返って考察を進めたい。幸い関係者の著作物や、連邦議会の審議資料をまとめて入手できたため、次年度に向けて幸先のよいスタートが切れたと考えている。 このように、本年度は分析対象の拡大も含めて、所期の研究計画に概ね沿った形で順調に研究を進められたものと考えている。来年度は、成果の学術誌への公表を含めて研究成果の取りまとめに集中する予定である。
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