本研究の狙いは、官公庁による情報システム調達過程の調査・分析を通じて、競争入札が直面している今日的課題の発生メカニズム・類型と対処策とを明らかにすることにある。その際、「談合」だけでなく「入札契約の実施・更新過程」にも競争入札の阻害要因は存在する、という視点から入札制度の分析を行う点が、本研究の特徴である。 平成17年度は、前年度に引き続き、内閣官房編『政府調達における我が国の施策と実績』(各年版)に基づき、2002年及び2003年調達分の情報システムに関する行政文書の開示請求を行った上で、開示文書をデータベース化した。 そのデータからは、「入札契約の実施・更新過程」における事業者の戦略的行動が調達側である官公庁にとっての取引費用を高め、一定の不経済をもたらしているであろうことが予想された。そこで、事業者の戦略的行動がどの程度の不経済をもたらしているのかを、落札率を従属変数とする回帰分析により、定量的に分析した。 最もデータがそろった郵政省・郵政事業庁・日本郵政公社による1999年4月から2003年12月までの情報システム調達関連データを分析したところ、事業者の戦略的行動、とりわけ、1社応札時に容易になる再度入札の繰り返しという機会主義的行動が明白に不経済をもたらしていること、そして、競争入札の有効性を高めるには、単に入札過程での競争圧力を増大させる工夫だけでなく、事業者の戦略的行動を抑制する制度的工夫も必要であることが明らかとなった。
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