労働市場の流動化、女性の社会進出、少子高齢化等の環境変化が、どのような政策対応をもたらしたのか、その際、政党政治はどのような影響を与えたのかという点を中心に研究を進めた。具体的には、男性正社員の長期雇用と女性(主婦)のパート雇用を前提として構築されてきた日本の社会的セーフティネットが抱える問題点と利害対立を明らかにした上で、各政党がどのような政策を支持するに至ったのかを調査・整理することが研究課題である。 平成16年度における研究活動は三点に集約できる。第一に1998年から2003年までの重要法案の国会審議の内容分析を行い、各政党の政策位置を数量化した。第二に、2000年以降の雇用政策は地方自治体レベルで先進的取り組みがあるため、宮城県の事例を予備調査した。第三に従来から行ってきた雇用保険の制度改正の歴史分析に対し補足調査を実施し、英語論文として投稿の準備を行った。従って、研究経費としては、データ記録・整理のためのノートブック・パソコン、内容分析対象書類をスキャンするためのドキュメント・スキャナー、図書などの設備備品費・消耗品費、地方での予備調査を目的とした国内旅費、研究補助・英語編集・校正などのための謝金が主な支出となった。 平成16年度の成果としては、研究補助を得て重要法案の審議内容に関するデータの収集整理ならびにコード化作業が完了したことがある。さらに英語論文"Risk Sharing or Cost Externalization : Employment Maintenance Policy and the Underdevelopment of the Social Safety Net in Japan"を校正補助を経て編集作業を終了させた。
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