構造改革特区に関する評価委員会による構造改革特区の評価に対しては、学界と実務の双方から批判が寄せられている。 実務では、弊害の立証責任を負わされた府省から、評価までの期間が短すぎ、弊害について十分な検証が行えないとの批判がある。学界では、構造改革特区の評価が話題になることがそもそも少ないのであるが、鈴木亘がプログラム政策評価の標準的手法からあまりにかけ離れており、問題が多いと批判している。鈴木の批判は主に以下の二点である。第一に、実験計画法(experimental design)などの既知の手法を用いて実験を実施した地域(特区)と実施していない地域との比較を行い、特区における規制緩和の純効果(net effect)を測定すべきであるのに、それが行われていない。第二に、規制緩和によって失われる利益(既得権益)と新たに得られる利益の比較が行われるべきなのに行われていない。いずれも構造改革特区における規制緩和の正確な評価を行うという視点からは妥当な批判である。加えていうならば、弊害を主たる評価基準としているため、効果や費用が考慮されない、言い換えれば、弊害もないが効果もないというケースも全国展開されてしまうということも、正確な評価という視点からは問題といえよう。 一般に、政策評価理論では、構造改革特区の評価のように外部評価を行うのは、評価技術の専門家を行政の外部に求め、効果等の測定・分析を正確に行うためであるとされる。ところが、構造改革特区の評価委員会では、内部性(Internality:組織構成員にとっては常識であり組織維持のために有用であるが、組織外から見れば非常識な判断・慣行等)と無縁の改革者による提言という意味で外部評価が用いられている。いうなれば、客観的だが正確とは限らないという位置付けが外部評価には与えられているわけだが、これを発見したのが今年度の主要な研究成果である。
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