前年度に続き公開史料の調査・収集を行ったと同時に、研究論文の執筆と発表を行った。 まず第一に、外務省によって編纂されている『日本外交文書サンフランシスコ平和条約準備対策』について調査し、とくに、平和条約研究幹事会・各省連絡幹事会の設置及びこれらの機関による講和準備のための研究文書などを収集し、平和条約締結の実現に向けて進められた基本的な外交政策方針の模索に関わる文書を中心に、調査・収集を行った。 第二に、中国や米国における日本外交の専門家と意見交換を行った。まず2006年9月、中国の上海復旦大学や南京師範大学などを訪問し、日本政治外交や日中関係史の研究者と、日本の戦争賠償やアジア外交について意見交換をした。さらに2006年12月、米国のアメリカン大学にて戦後日本の外交政策に関する国際会議に参加し報告を行い、米中双方の専門家と意見交換をした。 最後に、現段階で完成した論文を共著の一部として上梓した。一つは、戦後日本がアジア諸国に対してとった戦争賠償政策や日中国交正常化過程における賠償問題の処理および今日の戦後補償問題との関連を取り上げ、「戦争賠償問題から戦後補償問題へ」というテーマで、劉傑・三谷博・楊大慶編著『国境を越える歴史認識:日中対話の試み』の一章として、2006年5月、東京大学出版会より出版された。同時に、その中国語版も中国の社会科学文献出版社より刊行された。さらに、日本の戦後処理や歴史認識の問題との関連から、日本とアジア諸国との間で問題となっていた靖国問題を取り上げ、「靖国問題と中国:『戦後は終わった』のか?」というテーマで、中野晃一+上智大学21世紀COEプログラム編『ヤスクニとむきあう』の一部として、2006年8月、めこん出版社から出版された。
|