本年度は、前年度に続き世界銀行インスペクション・パネルの実効性について明らかにするため資料と文献の収集を進めると同時に、個別プロジェクトの調査を行う形で研究を進めた。 (1)5月にこれまでの成果を日本国連学会誌に発表した。 (2)4月から9月には、書誌データを用いて研究に関する文献をリストアップし入手した。8月には世銀東京事務所および国立国会図書館、国連大学図書館にて、論文、雑誌記事、外国語雑誌と新聞記事等を悉皆調査し収集した。以上の情報は、スキャナーとデジタルカメラを用いて電子化し、ノートパソコンにて常時参照できる環境を構築した。 (3)10月から12月にかけては、前年度の研究成果を活かす形でパネルの個別プロジェクトについて調査対象を選定し、バングラデシュのジャムナ橋プロジェクトを対象と決めた。1月から2月初旬には関係する論文、雑誌記事、地図等を入手した。2月下旬、約1週間バングラデシュに滞在し、現地調査を行った。調査では、完成した橋の写真撮影、橋建設に伴い作られた再定住地村と関連施設(学校)において聞き取り調査を行った。加えて、世銀・アジア開銀とともに協調融資した国際協力銀行ダッカ事務所、ジャムナ公団現地事務所と本部において聞き取りを行った。併せて、バングラデシュの経済開発、環境関連等の文献資料を収集した。 (4)2月中旬、バングラデシュ訪問に先立って、世銀パネルについて詳しい米国ワシントンD.C.のNGO「銀行情報センター(BIC)」が2005年インドに設立したBICアジア支部の主催するワークショップに参加するためインドのデリーを訪問した。この会合への参加によって、南アジア地域のNGO代表と幅広い意見交換と情報網を構築することができた。また、パネル設置の契機となったナルマダ・ダム・プロジェクト補足調査について、最新の現地情報を収集することができた。
|