研究概要 |
本研究では、繰り返しゲームの理論をRotating Savings and Credit Associations (ROSCAs)に応用する事に主眼が置かれている。 1.先行研究:Besley, Coate, and Loury (AER, 1993)に始まる先行研究のまとめを行った。多くの先行研究においては、「耐久財購入」、「保険としての機能」、「(女性参加者による)貯蓄切り崩しへの防御」等、ROSCAsへの参加の動機付けに主眼が置かれている。しかし、本来「貯蓄」の動機は個人によって異なるものであり、それぞれの先行研究による動機付けはケーススタディーの粋を出ないという印象を持つ。それに対して、繰り返しのinteractionがROSCAsにとっては重要要素であるにも関わらず、その構造自体を明示的に扱った研究は皆無であった。 2.データ:モデルから導き出される結果の整合性を確かめるために、データ利用はモデル構築と補完的な関係を持つ。日本においてはROSCAsの存在自体がほとんど観察されなくなっており(例:頼母子講)、更に具体的な個人情報を扱うという意味においても、データ利用の可能性はない。しかし、古文書等、過去の生活についての記録は幾つか残っており、今回も1800年代後半の琉球における「模合」に関する古文書のコピーを得ることができた。現在、文字起こしも終わり、データの形に書き換えている段階である。そのため、この資料のデータとしての利用可能性についてはまだ確かではない。他の可能性として、先行研究に用いられたデータの利用可能性についても確認する予定である。 3.モデル:既存の繰り返しゲームについてのreviewを行った。本研究においては貯蓄を対象とするので、「参加者がrisk-averseである」という仮定を置く必要がでてくる可能性もある。データ利用の確認と平行して、モデルの構築を進めている。
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