研究概要 |
1.経営者による合併の近視眼的な決定に関する動学的研究 (1)合併の戦略的意思決定行動の分析 国際貿易のフレームワークに寡占理論を適用し,外国企業による国内企業の買収問題を考察する理論モデルを構築し分析を行った.買収企業と被買収企業との間に,買収後も情報の非対称性が存在する場合,企業買収が戦略的に望ましいかどうかについて分析を行った.買収企業と被買収企業との間に利害の不一致が存在する状況を,プリンシパル・エージェンシー理論を用いて分析し,たとえ非対称情報取得のコストが掛かるとしても,合併が望ましく,競争緩和によるメリットが情報レントを上回ることを示した.この成果を"International M&A and Asymmetric Information on Market Demand"というタイトルの論文にまとめ,現在査読付雑誌へ投稿中である. (2)標準的な寡占理論における合併の利益分析 標準的な寡占理論を再考し,あまり議論されていない一般的な多段階シュタッケルベルク数量競争のモデルを用いて,合併利益についての論文を執筆した.シュタッケルベルク均衡において,数量選択の意思決定タイミングが多段階で異なる状況で,同時手番と逐次手番の企業の合併利益とその相対的大小関係についてまとめた.この成果は,論文"Mergers under the Generalized Hierarchical Stackelberg Model"にまとめ,上記同様投稿中である. 2.M&Aの株式の取得過程に関する研究 (1)ファイナンス手法の観点からのM&Aに関する企業戦略の解明 現在日本でもtakeoverやTOB手法とそれに関する敵対的買収規制に関する議論が白熱している.このtakeoverに関する経済事例や,法制度・規制強化に関する最新の情報を調査中であり,現在はコーポレートガバナンスを踏まえたtakeoverの効率性を理論分析するための準備段階である.次年度に理論モデルを構築し分析を開始する予定である. (2)株式取得のtakeover bidのオークション理論によるモデル化 現在,Krishna(2002,Academic Press)等によりauction theoryについて研究している準備段階である.次年度に,モデル分析を開始・成果をまとめる予定である.
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