補助対象研究の初年度に当たる本年度は、技術選択・知識蓄積の基礎となる理論を幅広く構築・整理すること、既存研究の調査、および内外の研究者との情報交換を中心に研究を行った。 まず制度・資本市場が技術選択に与える効果を分析する研究を行い、暫定的結果を論文Credit Market Imperfections and Industrializationにまとめ、6月に明治学院大学で行われた日本経済学会春季大会で報告した。また、所得水準と環境が技術水準に与える効果についても共同での研究を行い、共著者による論文報告Income Heterogeneity and Escape from Poverty-Environment Trapが同学会で行われた。 7月から8月にかけてはボストンで行われたNBER Summer Instituteとミネアポリスで行われたMinnesota Workshop in Macroeconomics Theoryに出席し、経済成長・経済変動に関わる有益なセッションに多数参加した。特に新進の学者であるReto Foellmi氏とSchmooklerタイプの経済成長理論についてディスカッションを行い、今後の研究方向に重要なアイデアを得た。 知識蓄積と経済成長の効果を考えるため、知的所有権が経済成長に与える効果についても平行して共同研究を行った。その中間成果の報告Intellectual Property Rights and Economic Growthが9月に日本経済学会秋季大会(岡山大学)で行われた。10月には本研究の柱の一つとなる論文Emergence of New Industries and Endogenous Growth Cyclesを神戸大学で開催されたKobe COE Advanced Economic Study Seriesで報告した。研究会では高名な経済成長理論研究者であるElias Dinopoulous、Paul S. Segerstrom両氏と知識蓄積・スピルオーバーの定式化および解釈について重要なディスカッションを行った。さらに教育機会の拡充による知識蓄積の促進が経済成長に与える効果について研究を行い、2005年1月にKyoto Conference on Education and Trainingに招待され報告Availability of Higher Education and Long-term Economic Growthを行った。
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