研究概要 |
本年度の研究では,"Does the Copayment Scheme Matter to Physicians?"(共著)という論文を作成し,医療保険制度変更に伴う医療受診・医療サービス供給行動に関する定量的分析を行った.老人保健制度の自己負担方式が定額負担から定率負担へ変更される前後の時期の標本を用いることで上記の分析を行った.理論的には,負担率(医療の単価と解釈できる)が上昇する患者と負担率が減少する患者によって提供される医療サービス量に変化が生じる可能性を指摘し,それをデータによって確認した.実際,負担率が減少するグループに対しては検査,指導などのサービス供給が増加し,それ以外では減少しているなどの医療受診・サービス提供行動の変化がデータから確認された. また,本研究で繰り返し利用している統計手法であるノンパラメトリック回帰分析手法に関して,説明変数が複数の場合のバンド幅の選択手法について研究し,その方法と妥当性についてPrewitt(2004, Scandinavian Journal of Statistics)の方法を多次元の場合に拡張し,その統計的妥当性について理論的に示した.この方法を適用した,"On Local Polynomial Estimation of State-Price Densities : An Application to Japanese Option Pricing"(共著)という論文を作成し,次年度はモンテカルロ実験などによって上記の手法の性質についてより詳細に調べる予定である.
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