本研究では、ネットワーク外部性が働いている産業におけるネットワーク間相互接続や技術互換性について理論的・実証的に検討している。 本年度はまず、ネットワーク外部性について及びネットワーク外部性が働いていると考えられる産業に対する規制のあり方についての既存の理論経済学的分析と、特定の産業におけるネットワーク効果を測定する実証的分析を体系的に収集し整理した。 また、日本の電気通信(ブロードバンドを含む)、パソコン通信、インターネット、金融ネットワーク、パソコンOS、アプリケーションソフト(ワープロ、表計算、動画プレイヤー)といった産業・市場について、資料・書籍を収集・整理するとともに、ヘビーユーザに対するヒアリング調査を行うことを通じ、各産業・市場の特徴と発展の経緯、特に、どのようにネットワークが拡大し、どのような形でのネットワーク間相互接続あるいは技術互換性が実現してきたかについて正確に把握することに努めた。更に、このような産業に対してどのような産業育成政策、規制、競争政策、知的財産政策が採られてきたについても資料・書籍を収集し整理した。 これらを踏まえた理論分析の第一歩として、ある産業の初期においては複数のネットワークが相互に接続せずに競争するが、産業が発展するに伴い相互接続が実現するという、しばしば観察される事象を説明するためのモデルを複占モデルから寡占モデルに拡張し、政策的含意を導出した。 現在、更なる理論的分析と実証的分析に必要な分析ツールについて近年の研究の動向の整理を進めている。
|