研究概要 |
本年度は,小国開放経済の内生成長モデルを構築し,税収を家計に一括的に移転するという消極的な政府支出政策の下で,税収中立的,消費者価格中立的,あるいは他の形の関税・租税改革が厚生や税収に与える影響を調べた.2本の論文をまとめた. 論文"Tariff and tax reform : dynamic implications"では,資本財と消費財を持つ内生成長する小国開放経済において,収入中立制約の下で最適な輸入関税と消費税の組み合わせを特徴付けた.その国が資本財を輸入している場合に注目し,2つの主要な結果を得た.第一に,最適下では資本財の消費が消費財より歪められる.第二に,最適関税率は正であり,これは市場の失敗のない小国でさえ自由貿易が最適ではないことを意味する.この論文は現在Journal of International Economicsに2回目の修正再投稿中である. 論文"Growth, revenue, and welfare effects of tariff and tax reform : win-win-win strategies"では,2財2要素の内生成長モデルを用いて関税・租税改革の成長・収入・厚生効果を調べた.ラーニング・バイ・ドゥーイングと部門間の知識のスピルオーバーが,不完全特化と整合的な内生成長に寄与する.2つの主要な結果を得た.第一に,輸入部門が効率労働集約的(資本集約的)なとき,そしてそのときにのみ,貿易自由化は成長率を上げる(下げる).第二に,成長を促進する消費者価格中立的関税・租税改革に,歪みの小さい財への消費税の追加的な引き上げを組み合わせることにより,成長率・収入・厚生を高められる.この論文は平成17年3月にKobe COE Conference on International Tradeで発表され,現在投稿中である.
|