本研究は交通社会資本がもたらす整備効果の測定と、基盤整備に関する政策評価とインプリケーションの導出を定量的分析に基づいた上で行うことを目的としている。そのための研究計画として、具体的には(1)過疎地域(離島エリアも含む)における交通整備事業の効果測定、次に逆の視点より(2)都市地域における交通資本生産性の計測、および(3)マクロ経済における全体効果測定の3つを主要なプロジェクトとして位置づけている。 これらの流れのうち、平成16年度においては主に離島地域を中心とする過疎エリアにおける社会資本整備に焦点をあて、具体的には沖縄県離島地域における交通基盤整備(沖縄振興開発計画)に基づく空港・港湾・道路整備事業の歴史的背景、現状考察、および各資本生産性の推計を行った。これらの推計を行うため、前段階として離島エリアにおける社会資本ストックおよび民間資本ストックをフロー時点で推定した上で、減耗率を加味した形でストック化する作業を行った。これらのデータ整備はまだ完全なものではなく、今後の継続調査も必要であるものの、交通関連資本データとしては1次推計に用いる水準にまでは十分に加工されており、結果的にモデル推計に適用できるものとなった。 上記作業を1年間かけて行ったことにより、研究計画(1)における離島地域の交通資本生産性のモデル構築と推計結果が導出され、それによれば離島地域全般における交通資本がもたらす生産性効果はわずかに負であり、したがって本来の意味での外生的効果の逆の意味での影響をもたらすことが判明した。同時に、それらの資本を細分化して分析したところ、空港および港湾整備事業はほとんどマイナス効果はなく、むしろ道路整備事業が民間経済にもたらす負の効果がきわめて大きい点であることが認められた。
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