昨年度、世界自然遺産候補地(当時)である知床において実施されているエコツアーについて、全国の一般住民に対してアンケート調査を実施し、ツアー内容(ツアーの目的、ガイドの説明、同行人数、野生動物が見られる確率)の異なる複数の代替案の中から、最も参加したいと考えるツアーを選択してもらう質問(選択型実験)を行った。本年度は、はじめにこの調査に関する詳細な分析を行った。 昨年度は、基本モデルとして、条件付きロジットモデルによる分析を行ったが、このモデルでは回答者の選好の同質性を仮定している。しかし、一般住民の中には、環境に関心のある人もそうでない人もいることが予想されるため、選好の同質性を仮定することは制約的である。そこで、選好の同質性を仮定しないより一般的なモデルである混合ロジットモデルを適用することで、回答者の選好の多様性を把握することを試みた。その結果、多くの属性について、選好の多様性が存在することが確認された。さらに混合ロジットモデルによる分析を発展させて、個人別パラメータの推定も行った。これにより、マーケティング戦略策定に有益な様々な知見が得られた。 本調査の結果と、昨年度分析を行ったエコツアー参加者を対象とした調査の結果を比較することで以下の結論が得られた。1)ツアー参加者調査では、自然環境を深く楽しむツアーが高い評価を得たのに対し、一般住民対象調査では、よりエンターテイメント性の高い調査が高い評価を得た。2)「詳しい説明」は、ツアー参加者調査のみで有意であった。3)「同行人数」については、いずれの調査でも予想に反する結果が得られた。4)「野生動物が見られる確率」については予想通りプラスに評価された。 2006年2月から3月にかけては、流氷に触れ合うことや冬の動物を観察することを目的とした冬のエコツアーに関する調査も実施し、同様に参加者の選好分析を行った。
|