研究概要 |
本年度は,一番目の研究課題[Nakayama(2002)International Journal of Automotive Technology and Managementのモデルに製造業者を組み込み,製造業者・既存の小売業者・電子商取引に従事する新しい小売業者の3者間の戦略的依存関係を分析するためのモデルを構築する]について達成の目処がついた。具体的には,ホテリング型の線分市場モデルをメーカーが電子商取引に関する販売チャネルへ自社の財を流通させるかどうかの選択肢(自社で電子商取引サイトを運営する場合を含む)を持つ場合に拡張した。そして,垂直的取引制限が存在しないケースの均衡分析を行った。その結果,均衡においては一般に最適な資源配分が達成されず,例えば電子商取引を導入した方が社会的には望ましい場合でも,メーカーはその誘因を持たない場合があることが分かった。そして,ここまで研究成果について,論文にまとめ,学会報告・論文投稿の準備を行なった。 また,上記のモデルをベースとして二番目の研究課題[どのような条件の下で再販制度を含む垂直的取引制限が製造業者と小売業者の契約において用いられるのか,あるいは用いられないのかを上記のモデルを用いて分析する]および三番目の研究課題[2の分析結果を社会厚生の観点から評価する。そして,電子商取引が競争政策に新たにもたらす論点を整理し,それらの論点における対応策を考察する]に取り組み,別の論文を作成するための準備を行なった。
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