自動車交通を原因とする環境問題や事故の問題が世界的に深刻であることを背景に、環境、経済、社会の三側面から、「持続可能な交通」の概念や政策の検討が進められている。本研究の目的は持続可能な交通の便益評価、目標設定、政策に関する検討を行うことであるが、本年度は特に、発展著しい上海市における総合交通政策の実態把握に重点を置いた。そのほか、大気汚染対策の便益評価の準備、交通のセキュリティの観点から女性専用車両のあり方に関する検討などを行った。 上海市の交通政策調査についてはあらかじめ文献調査を実施したうえで、上海社会科学院、上海市発展和改革委員会、上海城市交通管理局、上海市城市総合交通計画研究所、上海国際商品拍賣有限公司、上海国際汽車城産業発展有限公司にてヒアリング調査を実施した。詳細は別途発表する予定であるが特徴的な点として、マイカーのナンバープレートの発行枚数を管理したうえで入札を実施してきたこと、2004年より入札制を公用車に拡大したこと、2007年以降に混雑料金(ロードプライシング)の実施を計画していること等が挙げられる。また都市鉄道や高速道路の建設も急速に進められている。20%の道路に70%の自動車が集中することにより渋滞問題が生じているものの、北京などと比較するとモータリゼーションの弊害を制御できているといえる。 大気汚染対策の便益評価の準備については、欧米における研究・対策動向の把握に努めた。わが国で必ずしも重要性が十分に認識されていないオゾンが主要テーマとなってきている。女性専用車両のあり方に関しては、試行段階から普及段階へと進む中で踏まえるべき課題を整理した。
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