本年度はアジアにおけるモータリゼーション進展の動向やその特徴をデータにより客観的に把握したうえで、上海市を重点的な対象として持続可能な都市交通に向けた政策に関する調査を行った。またアジア諸都市における持続可能な交通に向けた取り組みを支援するための手法として、CDM(クリーン開発メカニズム)の活用可能性を検討した。さらに現代世代にとっても重要な交通の持続可能性の課題である安全対策の評価に「安全会計」の手法を採り入れるための検討を行った。自動車交通の外部費用推計の将来的な発展方向となり得る道路景観やスプロール化の費用等についても基礎的検討を行った。 アジアにおけるモータリガーションは、非常に急激であることや自動二輪車の大量普及といった特徴がみられる。低公害車の普及促進などにおいて先進的な取り組みが散見されるほか、上海市やシンガポールではオークションの活用による自動車保有管理政策が実施されている。上海市は差別価格・封印オークションであるのに対し、シンガポールは均一価格オークションであり、封印から公開オークションへ移行したといった差異がある。上海市では第十一次五ヶ年計画に対応した都市交通計画の全体像が明らかになってきた。国レベルでも自動車燃費規制が実施されるなど交通環境政策の進展がみられるが、上海市ではロードプライシングの実現可能性は低くなってきており、LRTなどの導入も否定的である。交通分野におけるCDMは世界的にはBRT等の導入や燃料転換などで承認される事例が出てきており、その他にも公共交通輸送力増強プロジェクトなどが考えられる。 「安全会計」については、その概念や基本的手法を構築したうえで具体的な導入に向けての課題を検討した。公共交通の安全性を念頭に検討を進めたが、航空、医療、発電所、さらには改正消費生活用製品安全法の対象となるような各種消費者向け商品やサービスに適用が可能である。
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